劇場情報
バカで、みっともなくて、身のほどをわきまえず、
ときどきゴミクズ以下になって、
二股かけたり、かけられたりしても、
恋したくなっちゃうんだ、僕たちは、彼らみたいに。
門間雄介(編集者/ライター兄)
出てくる人物たちに他人を笑わせようなんてつもりは全くない。
だけど笑わずにはいられない。
彼らはまさか見られているとは思っていまい。
若者達の暮らしを覗くのは、結構面白い。
立川春吾(落語家/柏木役・岡部成司の実兄)
好きって、どういうことだろう?そんなフワフワしたものを描いているのに、『サッドティー』の中にはちゃんと、暖かくて面白くて情けない答えが入っています。誰かが誰かを好きって思う、ただそれだけのことがこんなに楽しいことだなんて!夢もロマンも全然無いのに、「好き」っていいな。素敵だな。って思える、最高の娯楽映画です。
岸田 メル(イラストレーター)
ゲスな男と女たちが、丸腰で愛することと格闘している。彼らは、非力で、不器用で、無様で、情けなく、ときに目を背けたくなるけれど、なぜ、こんなにもかわいらしいのだろう……。
窪 美澄(小説家)
今泉映画の登場人物は男も女も、迷い、ブレる。ブレ続ける。迷い、ブレ続ける、ということにおいて、迷いがない。僕のようなブレブレの人間は、そこに全面的に救われます。 そして、小悪魔というより、迷子のような青柳文子はそんな今泉映画のヒロインにぴったりで、その「揺れる声」は讃美歌みたいに聴こえる。
小林 司(編集者・妄撮P)
「純粋な愛」ってもしかして都市伝説なの…?本当は「好き」ってどういうことなのか自分でもよく分からないって事を知ってた事を思い出してしまう。胸がつかまれてザワザワする。なのになんでこんなに笑えるんだろう。人生は無い物ねだりと諦念の間で蠢いている。でもそんな感じが性に合ってる。そう思える映画。是非カップルやご夫婦で見てほしい。そしてお互い顔を見合わせて「ちゃんと好き」ってどういうことか話し合ってみてほしい。絶対喧嘩になると思う!
ねむようこ(漫画家)
青柳文子は今泉力哉監督のミューズだ。古着屋で着乱れる彼女の数十秒間の表情の変化と柔らかいブラウスがたわみ、波のようにかたちを変えていく様は、永遠に見つめていたいほどセクシーでおかしくて自由。その後、こっけいで苦いことになるとふまえた上で、今泉監督は、人が人に恋に落ちる瞬間を見事にすくいとり、いつも肯定してくれる。
柚木 麻子(小説家)
あなたは「人に絶対に知られたくない私の恋愛が出演してるじゃないか」と思うと思う。おれも思った。
二村 ヒトシ(アダルトビデオ監督)
いわゆる「ラブコメ映画」の楽観性とは真逆のリアリズムでありながら、とても笑える「非ラブコメ的恋愛コメディードラマ」の誕生だ。複雑な恋愛群像劇を鮮やかに描く今泉監督のMagical でマジ軽な演出力は、いよいよ洗練の域に入ってきた!
矢田部 吉彦(東京国際映画祭プログラミングディレクター)
サッドティーを観て、イスから転げ落ちるほど驚いたシーンがありました。それは、ある人物がフェードアウトし、またフェードインするシーンなのですが、フェードインフェードアウトという編集上のギミックで笑いを取るって、天才だなと確信しました。だから、今泉監督の作品は短編を含めほとんど観ています。新作も待ち遠しい!
平林 勇(映画監督・CMディレクター)

これはアントニオーニが下北でスープカレーを食べ、ロメールが新宿の純喫茶でブレンドをすすりながら詠んだような映画だ。もちろんほめ言葉です。

樋口尚文(映画評論家、監督)

「ちゃんと好き」って、どういうことか、わたしも知りたいと思ったんだけれど、映画を観たらもっとわからなくなった。でも、恋愛に迷って、ひねくれて、嫉妬して、つまらない見栄を張って、自己嫌悪に陥って、うじうじぐねぐねして、自分でも面倒くさくなるくらい人のことを好きになってしまうことって、ほんとうに面白いなと、『サッドティー』のひとたちを見ていて思う。上手くいかない恋愛を「まぁいっかー」なんて受け入れながら、願わくば、限りなく面白く生きたい。

森下くるみ(女優・文筆家)

女性が男性の前で、嘘をついたり、騙されたり、許したり、精一杯の愛情で返答している姿を見て、将来やっぱり男性より先に死ねないと思いました。みんな恋愛を求めて、恋愛に悩んで迷って、それぞれ一番綺麗なお顔があって。誰もキスをしないから、それが体が触れ合う瞬間に見えるのではなくて、翻弄されてるときが一番綺麗だなあと思いました。ちゃんと好きってどういうことかわからないけど、ちゃんと好きって、嬉しいな。

橋本愛(女優)

好きの形や重みは人それぞれだということを『サッドティー』から教えてもらいました。不器用でやるせない登場人物達に蹴りを入れたくなるし、愛くるしくもなる。そんなもどかしい自分を発見できた作品です。恋愛してる人、恋愛したい人、恋愛したくない人、恋愛が分からない人、こそ観るべし恋愛映画。

武田梨奈(女優)

小津作品『お茶漬の味』から遥か遠く……。
今泉が描く“リア充文化系”の業の輪舞は、
悲しみという嗜好品を呑みながら本日も回り続けます。

森直人(映画評論家)